渇いた文体の根底に流れるのはパンクロックの血 井上先斗さんの原点「甲本ヒロト、真島昌利、忌野清志郎」_栄冠 ナイン 名門
今年4月、体の栄冠 ナイン 名門第31回松本清張賞を射止め、根底デビューした井上先斗さん(30)の受賞作「イッツ・ダ・ボム」はグラフィティと呼ばれるストリートカルチャーを題材に描いたエンターテインメント小説だ。に流郎渇いた文体の根底に流れるのはパンクロックの血。れるのはパンクロックさんロト「甲本ヒロト、の血先斗真島昌利、井上忌野忌野清志郎の歌詞が言葉の置き方としてずっと僕の中にある」と井上さんは饒舌(じょうぜつ)になった。の原(瀬戸 花音)
街の中に突如、点甲現れる“落書き”。本ヒ「グラフィティ」と呼ばれるそれはストリートカルチャーで、真島法を犯しつつ、昌利「俺はここにいるぞ」と伝える鋭利な自己表現にもなりうる。清志栄冠 ナイン 名門一方、渇い公共物を破壊しない手法で表現するグラフィティライター・ブラックロータスが「日本のバンクシー」と呼ばれ“バズった”時、人々の思惑が交錯する。
「誰にも理解されないようなものに対して、それを肯定するとか否定するとかではなく、ただそこにそういう人がいて、そういう気持ちがあるっていうことを見つけられるような物語を書いていきたい」と新星作家は作品に込める思いを表す。
法を犯していないと「切実」とはいえないのか。不良はかっこいいのか。とがったストリートカルチャーを通して描かれるのは、リアルに染みる世代観だ。
作者は30歳。「『池袋ウエストゲートパーク』のような不良カルチャーに対して、ある程度かっこいいものというインプットはあるし、プレーヤーとして憧れるカルチャーは下の世代のものより、上の世代のもののほうが多い。一方で、たとえば『幽☆遊☆白書』の序盤の幽助の不良描写には『なんかちょっとな…』という思いも芽生えたりするんです」
物語の中には、ストリートに居続ける“上の世代”のグラフィティライター「テエル」と新進気鋭の「ブラックロータス」がいる。井上さん自身は2人の間の世代だという。「テエルが大体40代ぐらいのイメージで書いていて、ブラックロータスは20代なんですけど。それ故に、テエルを書く時には、自分がずっといろんなことで触れてきた先輩たちのことを重ねることができたし、逆にブラックロータスは自分が来た道や後輩を見て書いた」としつつ、「今の僕は不良カルチャーそのものをもう否定しようとは思わないけれども、じゃあ自分が乗れるものかっていったら、乗れないような感覚がある。どちらか片方に寄ってたら、世代差は書けなかったんじゃないかなっていう気持ちはあります」
グラフィティに出会ったのは子供の頃を過ごした神奈川・相模原市。高架下にたくさんの落書きがあった。「これはなんなのだろう」。芽生えたのは疑問。「すごくインパクトに残っていた。汚いし読めないし、なんか危ないぞという感覚と、多分その中にはかっこいいぞという感覚もあったと思います。とにかくその情景が目に焼き付いていた」
中学生の頃にグラフィティを題材とした伊坂幸太郎さんの小説「重力ピエロ」を読み、大学生の頃にバンクシーの話題に触れ、グラフィティという表現カルチャーを認識したという。グラフィティと小説、表現の差異をどのようにとらえているのか。「小説のいいところは一過性ではないことですよね。何十年後の人が古本屋で僕の本を手に取ってくれる可能性だってある。でも、一過性かどうかの違いはあれど、表現は表現。それぞれが心の同じとこに響く場合もあるかもしれないし、全然違うとこに響く場合もあるかもしれないし、片方だけしか響かない場合もあるかもしれない。同等でフラットに見るべきものだと思います」
松本清張賞に名前を刻んだ本作は、渇いた文体がまっすぐに響く。根底にはパンクロックの血が流れている。「特にラモーンズとか、デッド・ケネディーズが好きです。パンクロックが好きになるきっかけは、THE BLUE HEARTS。甲本ヒロト、真島昌利、忌野清志郎の歌詞が言葉の置き方としてずっと僕の中にある。リンダリンダみたいに無駄な言葉が一切ない、気取ったものをつかわない、そういう書き方をしようという意識はありますし、作品も曲を流しながら書いたりもします」
ある日、文春地下駐車場、社長車の後ろの壁にグラフィティが現れた。鮮やかなブルーの文字は「イッツ・ダ・ボム」。本作の表紙のためにグラフィティライターが描いたものだ。井上さんも描く様子を目の前で見ていた。「いやあ、本当にすごいんですよ! 人間が体をめいっぱい使って描く。人間がここに描いたぞっていう気配がもうどんどん強くなって、頼んで描いてもらったものだとしても、イリーガルな気配がやっぱり漂うんです」
社長との約束にはいつかは消すという文言が含まれている。「でも、今のところ、消せとは言われていないので…期限を引き延ばしてるうちに、どうにか大物作家になって、消すに消せなくしちゃいたいです(笑い)」
小説によって、地下駐車場のグラフィティが一過性なものでなくなったとき、その表現が人々にもたらすものは何か。鋭い眼光は可能性に満ちあふれていた。
【井上先斗さんが選ぶおすすめ一冊】
◆著・松本清張、編集・有栖川有栖、北村薫「清張の迷宮 松本清張傑作短編セレクション」(文芸春秋)
有栖川さんと北村さんが松本清張さんの作品の中から、これがいいっていうのを集めたアンソロジーなんですけれども、これが本当にとてもいい短編がそろっていて。
この中に「装飾評伝」っていう短編が入ってるんですけれども、これが、イッツ・ダ・ボムの第1部のオン・ザ・ストリートを書く前に、こういう話を書きたいと思って、参考にしていた話でもあります。
「装飾評伝」は、展開が分かった瞬間の気持ちまで含めて、もう完璧な短編と言っていいぐらいの作品です。他にも「月」という、どうしてこんなひどい話が書けるんだって話も入っていたり。
そして、この本のいいところは「どうしてこんなにひどい話を書けるんだ」って感じてつらくなった時に、最後に有栖川さんと北村さんの対談を読むと「本当にひどい話だよね~」って話していて、「やっぱそうだよね」ってホッと共感できるところです(笑い)。
◆井上 先斗(いのうえ・さきと)1994年、愛知県生まれ。30歳。川崎市在住。成城大文芸学部文化史学科卒。2024年「イッツ・ダ・ボム」で第31回松本清張賞を受賞しデビュー。会社員としても働いている。パンクロック、甲本ヒロトが好き。
続きを読む(责任编辑:探検する)
- 「初代タイガーマスクと日本のプロレス展」22日まで開催…「昭和プロレスの世界に浸れる」書泉グランデで
- 大物タチウオを10尾以上 一足早く“収穫の秋”となりました…釣りガール三浦愛の愛LOVEフィッシング
- 孤高で孤独から、頼れる手本へ―「恩返しというわけじゃないけれど、少しでも役に立てたら」荒尾聡1000勝…山陽オート特別G1共同通信社杯プレミアムカップ
- 高浜寛「薔薇が咲くとき」喪失感を抱えるフランス人女性、京都の禅寺に何を見る
- 「自分と重ねてしまった」金子恵美氏、不倫発覚の玉木氏会見で感じた「余計な発言」語る…「ゴゴスマ」出演
- 「月のお気に召すまま」が別マで完結、アルコ×蒼井まもるコラボの読み切りも
- U―19日本代表、主将は大宮のDF市原吏音「呼ばれた時にやるつもりでいました」25日からキルギスでU―20アジア杯予選
- 斎藤元彦兵庫県知事の不信任が全会一致で可決 辞職・失職か、議会解散か…いずれもいばらの道
- 鉄オタの転生者と異世界を切り拓くコメディ、フルカラーの「東サンディス旅客鉄道」
- 「チェリまほ」特別編集版メインビジュアルで指輪がキラリ、本予告には新規カット入り(コメントあり / 動画あり)
- 泣き虫で潔癖症な名探偵が“呪い”の謎を追う「ハンドレッドノート ―ナイトアウル―」1巻
- 関脇・大の里の連勝が11で止まる「攻めて負けた」 大関昇進“マジック1”は変わらず
- 天才マンガ編集者とマンガ家志望の極道娘がヒット目指して共同生活「こももりた」1巻
-
空手の試合中に危険行為で物議…選手の所属会が謝罪、セコンドは「無期限の謹慎」処分に
空手の試合中に危険行為で物議…選手の所属会が謝罪、セコンドは「無期限の謹慎」処分に2024年11月12日 13時19分スポーツ報知大分で空手指導を行う「実戦空手道勇征会」は12日までに、公式ホームぺー ...[详细] -
大関昇進目指す大の里に土 若隆景に屈し初日からの連勝は11でストップ
大関昇進目指す大の里に土若隆景に屈し初日からの連勝は11でストップ2024年9月19日 17時39分スポーツ報知◆大相撲▽秋場所12日目19日、東京・両国国技館)大関昇進を目指す関脇・大の里二所ノ関) ...[详细] -
両大関がそろって連敗 豊昇龍は阿炎のまさかの変化に6敗目「笑うしかない」 琴桜は5敗目で言葉少な
両大関がそろって連敗豊昇龍は阿炎のまさかの変化に6敗目「笑うしかない」琴桜は5敗目で言葉少な2024年9月19日 19時21分スポーツ報知◆大相撲▽秋場所12日目19日、東京・両国国技館)両大関はそろ ...[详细] -
J2藤枝 MF新井泰貴が「乾封じ」に意欲…22日・清水と今季2度目の静岡ダービー
J2藤枝MF新井泰貴が「乾封じ」に意欲…22日・清水と今季2度目の静岡ダービー2024年9月20日 6時0分スポーツ報知J2藤枝MYFCと清水エスパルスは22日、今季2度目のダービー藤枝サ)を迎える。 ...[详细] -
空手の試合中に危険行為で物議…選手の所属会が謝罪、セコンドは「無期限の謹慎」処分に
空手の試合中に危険行為で物議…選手の所属会が謝罪、セコンドは「無期限の謹慎」処分に2024年11月12日 13時19分スポーツ報知大分で空手指導を行う「実戦空手道勇征会」は12日までに、公式ホームぺー ...[详细] -
拓大の不破聖衣来「この経験を絶対に次のステージに生かさないといけない」…日本インカレで7位
拓大の不破聖衣来「この経験を絶対に次のステージに生かさないといけない」…日本インカレで7位2024年9月19日 21時19分スポーツ報知◆陸上日本学生対校選手権第1日19日、神奈川・Uvanceとどろ ...[详细] -
体操 パリ3冠の岡慎之助、褒賞金が2000万円を突破! ロスでは4冠目指す「一つ一つ積み重ねて継続して」
体操パリ3冠の岡慎之助、褒賞金が2000万円を突破!ロスでは4冠目指す「一つ一つ積み重ねて継続して」2024年9月19日 21時17分スポーツ報知日本体操協会は19日、都内でパリ五輪の祝勝会を開き、日 ...[详细] -
ブレイキンSHIGEKIXが母校でダンス授業 卒業文集に「織田信長になりたい。四年の一件は本能の変」
ブレイキンSHIGEKIXが母校でダンス授業卒業文集に「織田信長になりたい。四年の一件は本能の変」2024年9月19日 12時38分スポーツ報知パリ五輪で新競技として行われたブレイキン日本代表の半井重 ...[详细] -
推しを幸せにするためなら、なんだってしてみせる「悪役令嬢にできること。」1巻(試し読みあり)
「悪役令嬢にできること。~転生令嬢は、偽りの恋人に無償の愛を捧ぐ~」1巻帯付き)大きなサイズで見る全11件)「悪役令嬢にできること。~転生令嬢は、偽りの恋人に無償の愛を捧ぐ~」は、自分が愛読していた小 ...[详细] -
両大関がそろって連敗 豊昇龍は阿炎のまさかの変化に6敗目「笑うしかない」 琴桜は5敗目で言葉少な
両大関がそろって連敗豊昇龍は阿炎のまさかの変化に6敗目「笑うしかない」琴桜は5敗目で言葉少な2024年9月19日 19時21分スポーツ報知◆大相撲▽秋場所12日目19日、東京・両国国技館)両大関はそろ ...[详细]